IJCC会員様へのアイルランド副首相演説

在日アイルランド商工会議所昼食会

フランセス・フィッツジェラルド下院議員

アイルランド副首相兼企業・イノベーション大臣

2017年9月28日

[Check against Delivery 実際の講演と多少内容が異なることもあります]

はじめに

· 本日、在日アイルランド商工会議所(IJCC)の皆様と来賓の皆様にお話しする機会をいただきましたことを嬉しく思っております。

· 今回が私にとって2度目の訪日となります。前回、2014年に初めて訪日した際は、東京だけでなく、大阪、京都、北海道を訪れることができました。

· 商工会議所の皆様、そして会員の皆様の積極的な活動があるからこそ、日本とアイルランド二国間の経済的つながりがより強くなり、人的つながりを築くことができるのです。

· 先ほども申し上げた通り、今回が私の2度目の訪日です。2014年の最初の訪日時には、表参道で行われたセント・パトリック・デーのパレードに参加することができたほか、代々木公園で開催された「アイラブアイルランド・フェスティバル」でスピーチをさせていただきました。IJCCの皆様のご尽力により、このフェスティバルは、年々盛り上がりを増しています。この場をお借りして感謝申し上げます。このフェスティバルは、日本でのアイルランドの認知度向上に寄与しています。

· アイルランドと日本の関係は、かつてないほど非常に良好な状態にあります。今年は、両国の外交関係樹立60周年という記念すべき年です。長い年月の中で、相互尊重と価値観の共有に基づき、貿易、ビジネス、社会的、およびその他の分野で両国のつながりは拡大してきました。これから先も末永く、前向きで生産性の高い連携関係を深化させていけるものと期待しています。

· 私は、この1年の間に訪日した6番目のアイルランドの大臣です。このことから、アイルランドが日本との関係を重要視しているということは明らかであると思います。IJCCの皆様が、これまで訪日した他の大臣と実りある情報交換をされていることも承知しています。

· ドノフー大臣は今年、東京で開催されたセント・パトリック・デー行事への参加とともに、欧州連合(EU)の原点となったローマ条約の制定60周年の記念行事への出席のために訪日できたことを非常に喜んでいました。

· 本日のスピーチでは、アイルランドと日本についてだけでなく、EUに対するアイルランドのコミットした姿勢や、日本の重要なパートナーとしてのEUについてお話したいと思います。

· 日EU経済連携協定(EPA)における最近の大幅な進展から考えると、今こそ、アイルランドと日本の貿易、投資のつながりを拡大し、深化させる絶好の機会です。

· 70を超える日本企業がアイルランドに対して積極的かつ継続的に投資してくださっていることに深く感謝しています。これらの企業はアイルランドにおいて海外投資家・雇用主として高く評価されています。

· アイルランドと日本の二国間貿易は、年間で100億ユーロ(1兆3,000億円)超の規模となっています。50を超えるアイルランド企業が日本市場に参入し、100を超える企業が積極的に日本への輸出を行っています。

経済について

· アイルランドの現在の経済状況について概要をご説明いたします。

· アイルランド経済は、2016年のGDP伸び率5.2%など、近年はプラス成長を続け、力強く拡大しています。今年の成長率は4.3%、2018年は3.7%と見込んでいます。

· アイルランドの2017年度の財政赤字は0.4%と見込まれており、EUの目標値3%を大きく下回ります。また、債務比率も74%と、EU加盟国平均の85%を下回っています。

· アイルランドの雇用は力強く拡大しており、2018年の年末までに完全雇用に近い状態を達成すると見込んでいます。

アイルランドへの投資について

· 投資の誘致が成功し、バイオ医薬品分野のグローバル企業上位10社と、インターネット・情報収集通信技術(ICT)分野の上位10社中9社がアイルランドに投資を行っています。また、医療機器と金融サービスの分野も活況を呈しています。

· これらの企業は、製造から、研究開発、販売およびマーケティング、テクニカルサポートに至るまで、重要な事業をアイルランドで行い、その製品やサービスを世界の市場へと輸出しています。

· これらの分野において日本の主要企業の皆様の多くがアイルランドに投資してくださっていることを嬉しく思っています。また、そのアイルランド経済への貢献に対して感謝申し上げます。

アイルランド企業について

· 海外からの投資によって、アイルランドの近代的経済の基盤が築かれました。そこから次第に、アイルランド政府商務庁(貿易技術担当機関)の支援を受けて、アイルランド企業がアイルランドの経済的、産業的成長の推進力となってきたのです。

· アイルランド企業部門は、新しい製品やプロセス、および市場重視の革新的企業のホットスポットとして認識されています。また、アイルランド企業の強みとして、若く、高い技術力を持った、機敏な労働力を有している点を挙げることができます。複数の国際的研究結果において、アイルランドはこれらの具体的要素に関するランキングの全てで、上位を獲得しています。

· 活況を呈するアイルランドの企業部門は、その能力と業績において世界トップクラスを誇ります。強力な輸出部門であり、これを支えているのが急速に発展している科学技術イノベーションです。私たちは、他のどこにも負けないイノベーションを維持継続させるために取り組んでいます。

· この輸出主導型経済を支えているのは、適切な企業インフラ基盤、イノベーションと起業促進への継続した投資、互恵的協力関係、世界の顧客に価値を届けようとする姿勢です。

· アイルランド政府商務庁の主要な役割の一つは、そのクライアントとなる企業が世界の市場に事業参入できるよう支援することです。昨年、クライアント企業の輸出総額は年率6%増となる過去最高の216億ユーロを記録し、主要市場の全てで伸びを達成しました。

· アイルランド企業がこのような好調な業績を達成できたのは、ICT、Fintech、インフラ開発、クリーンテック(環境関連技術)、食品・非食品製造、ライフサイエンスなどの主要分野においてイノベーションを起こし、規模を拡大していくスタートアップ企業、ダイナミックなアイルランド企業のために、企業家を育てる環境を整えたことによるものと考えています。そして現在は、今後数年間でのさらなる業績の拡大を目指しています。

日本でビジネスを行っているアイルランド企業について

· 日本の主要な分野において、アイルランド企業のグローバルに活躍したいという向上心やレベルアップした洗練性(高度性)が評価されています。

· これらの企業の分野は、航空、農業、ICT、ライフサイエンス、Medtech、Fintech、工業、国際サービスなど、多岐にわたっています。

· 日本は特に、アイルランドのトップ企業にとって魅力的な市場です。その理由は、お客様や取引相手企業の誠実な姿勢はもちろん、日本市場の規模と、その高い洗練性(高度性)にあります。

· アイルランド企業は、アジアにおいて日本のお客様の満足度を知ること以上に事業活動に有効な情報が得られる情報源はないことを知っています。このため、アジア太平洋地域への輸出を行うアイルランド企業にとって、日本は戦略的に重要な市場なのです。

日EU経済連携協定(EPA)について

· 日本は、EUにとって非常に重要なグローバル・パートナーです。私たちは、民主主義、法の支配、基本的人権といった価値を共有しています。ともに、国民のために望んでいるのは、平和、繁栄、そして、二国間のつながりを強め、国際的な影響力をも高める、ルールに基づいた国際秩序です。だからこそ、アイルランド政府は、EUと日本が7月に経済連携協定の政治的合意に至ったことを歓迎し、そして、今、年末までに協定が正式に締結されることを心待ちにしています。

· この経済連携協定は、日EU関係を新たな戦略的水準に高めます。また、日本とEUとの間で、互恵的であるとともに、自由かつ公正で開かれた国際貿易経済システムの強固な基礎を構築していきます。 自由貿易を脅かす現状に鑑みれば、EUと日本が合意に至ったことは非常に重要であり、これは自由で公正なルールに基づく21世紀の世界枠組みのモデルとなっていくでしょう。

· 実務的な側面では、経済連携協定によってアイルランドと日本の間のビジネス活動はさらに拡大していきます。製品やサービス、投資、調達、関税撤廃対策や、地理的表示の保護、知的財産権の保護などに関連する問題に取り組むことで、二国間のビジネス活動の拡大はさらに進み、経済成長へとつながっていきます。相互の市場開放によって、貿易と投資は拡大します。そして、雇用が創出され、企業間の競争が促されていくでしょう。

· さらに具体的に言うと、金融サービス、Medtech、グリーンエネルギーなど、両国が利益を共有できる全ての分野でのさらなる規制緩和を期待するとともに、将来的には、日本でアイリッシュ・チェダー・チーズが、アイルランドでは抹茶がそれぞれ従来以上に普及していることを楽しみにしたいと思います。

日EU戦略的パートナシップ協定(SPA)について

· EPAは、EUが今後も日本にとって重要で信頼できるパートナーであることの証と言えますが、貿易と投資は、私たちの緊密な関係性の一面に過ぎません。

· EPAとともに、日EU戦略的パートナシップ協定(SPA)についても交渉は最終段階を迎えています。施行されれば、SPAがEUと日本の協力関係の法的枠組みとなり、戦略的な方向性が示され、ともに統一的な取り組みを行っていけるようになります。

· EUと日本はすでに海賊対策から気候変動への取り組みに至るまでさまざまな分野で緊密に連携しています。SPAとは、さらにもう一段階上の協力関係と、サイバーセキュリティや災害管理を始めとする新たな分野への協力範囲の拡大を意味しているのです。

Brexit(英国のEU離脱)について

· 英国のEU離脱の決断がもたらした深刻な課題と重要な機会について言及するのにふさわしいタイミングであると思います。アイルランドは、EUにコミットしている加盟国であり、企業に対してEU市場へのアクセスを保証することができます。EUへの加盟から40年以上の間に、アイルランドは他の加盟国および欧州の諸機関と強固なパートナー関係を築いてきました。そして、この関係はこれからもアイルランドの経済だけでなく、私たちのグローバル・パートナーにとっても有益な役割を果たしてくれるでしょう。

· アイルランドは、現在もEUにコミットした加盟国であり、ユーロ通貨国です。このことは、アイルランドの開放的で競争力のある経済を発展させるうえで今後も非常に重要な核となる要素です。アイルランドはこれからもEUとともに歩みますが、英国との良好な二国間関係の維持にも取り組んでいきます。

· 多くの日本企業を含むグローバルな組織が、すでにアイルランドへの部分的な事業移転に、非常に強い関心を示しています。それら企業の多くは、この数か月の間に、特に同じ目的を持つ企業を視察するためにアイルランドを訪れています。

· 先ほど述べた通り、すでに多くの日本企業がアイルランドに進出しており、アイルランドでのビジネスに関するそれら企業の感想としては、かなり好意的なものが得られています。

· 昨年は、武田薬品工業、アルプス電気、ニプロ、リクルート、住友、三菱、双日が、アイルランドで新たな事業展開または事業拡大を行っています。

· 正式に英国離脱交渉が開始され、アイルランドと北アイルランド間の国境への厳しい管理は避けるなど、アイルランドの問題に重点が置かれていることは非常に好ましいことです。

· アイルランド政府は優先事項を常にそして明確に示してきました。それら優先事項は次の通りです。

o 貿易と経済に対する英国離脱の影響を最小限に抑える。

o 北アイルランドとの和平プロセスを擁護していく。

o アイルランドと英国の共通通行地域(CTA)を維持していく。

o 今後のEUの方向性の決定に影響力を持つ。

· アイルランド政府は現在も、第一段階の重要課題についての協議で大幅な進展があり、関税や通商など、EUと英国の将来の関係に関する極めて重要な協議が並行して行えるようになるものと期待しています。

· 日本とアイルランドは、企業活動への悪影響や、人・モノ・サービスの移動の自由への悪影響を最小限に抑えられるように交渉を進めていくべきであるとの認識で一致しています。

終わりに

· 改めまして、本日は皆様にお話しする機会をいただいたことに感謝申し上げます。皆様からご質問やご意見をいただくことを楽しみにしています。

· アイルランド政府のEUにコミットする姿勢や、日本との関係を重視していること、また、アイルランドは日本企業にとって適した投資先であるということ、日本で事業を行うアイルランド企業の有する能力について少しでもお伝えできていればと思います。

ご清聴ありがとうございました。